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オレが働いている倉庫のすぐ目の前に柿の木があるんだ。
秋になればたくさん柿ができる。
植えて10年…くらいって言ってたかな。
渋柿なんだけど、落ちる寸前まで熟れたその実は
食べてみるとなぜかうまいんだよ。
つい最近のある朝、その柿の木を眺めていて気づいたんだ。
寒さも落ち着いてきて、今年も裸の枝の先に、ちいさな葉が芽吹き始めていた…。
で、昨年の台風で、その柿の木の枝が2〜3本折れかかっていたのがあってさ、
その中にはわずかに3ミリ程度で、
かろうじてつながっている枝もあるわけ。
その折れかかった枝のさ、先にね、目を移してみて驚いた。
芽吹いてんだよ。枝先にさ、ちいさな葉がふくらみ始めてんの。
「すげぇ…」って。「生きてんのかよ」って…、感動した。
枝の太さの10分の1程度しかつながってないのに。
細い細いその中に、しっかり流れているものがあるんだね。
細くたってさ、確かに流れていれば、芽吹くんだ。
人と人とのつながりに例えられるよね。
でさ、ふと目を移すとちゃんとつながって見えるんだけれども
全然芽吹いてない枝があってさ、
軽く触れてみたら、簡単にぽきりと折れちゃった。
まるで人と組織の関係のようだよね。
ま、とにかくその感動を誰かに伝えたくてさ、
倉庫近くまで来た若い従業員をつかまえては、「ちょっとこれを見てくれよ」って
その枝を指さして、話をした。
みんな「すごいですね!」って、わかってくれて、「な?すごいよな!」って
いっしょにその枝のちいさな葉の誕生を称えてくれた。
みんないいやつらだな。
仕事の話なんかじゃない。たかだか葉っぱの話だよ。
退職届を提出してから4日後の出来事さ。
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