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68「芦ノ牧ドライブ温泉大浴場」地獄 2016年10月26日
少々、焦っていた。
鶴ヶ城を出た時、
思いのほか時間が経っていて、
「こりゃあ、帰りは夜道になるな…」と
車を来た道に戻した。
再び芦ノ牧温泉。
目的地が唐突に見えてきて、ハンドルを右にきる。
がらんとした駐車場へと入る。
到着したのは「芦ノ牧ドライブ温泉大浴場」だ。
だが、入ったのは「ドライブインあいづ」の
駐車場だった。
ここには
「ドライブインあいづ」
「芦ノ牧おみやげセンター」
「芦ノ牧ドライブイン」と
3つのお店が道路に面して並んでいる。
「ドライブ温泉大浴場」は真ん中の
「おみやげセンター」の中にあるのだ。
「ドライブインあいづ、お休みなのか
店が閉まってるし…、いいよね。停めといても。
駐車、ここでいいね」
ほんのついさっき、鶴ヶ城で会津魂に触れ、
背中に「ならぬことはならぬものです」との
文字が入ったTシャツをおみやげに
買ってきたばかりだというのに、
早々にもうこの体たらくだ。
ドライブ温泉という名前を見て
以前入ったことのある
「那須大丸ガーデン」を思い出した。
そこもおみやげ屋さんの中にある異色の
温泉だったのだが、入ってみれば
えらく好きな湯質だったので驚いたことがあった。
さて、ここはどうか?
「ドライブ温泉」という異次元なネーミングが
まるでサブカルショップにでも
足を踏み入れるかのような、
「オレは好き探し神経」を刺激する。
店に入る。
平日だし、時間も午後4時半ということも
あってかお客さんはいない。
店のおばちゃんに声をかける。
入浴料は400円。
いざ脱衣所へと入る。
どーですか、この大袈裟感のかけらも無い感じ。
「かしこまったところなんて微塵も見せるかよう」
とでも言わんばかりだ。
ロッカーのカギだって、あったりなかったり。
しかもこのカギ、ずいぶんとひさしぶりに見た
なつかしいタイプのカギだ。
横にくっと押すボタンがあり、
押すと板状のカギが上にすこんと抜ける。
「やはりこのカギには木札がよく似合う」などと、
著しくなごんだところで浴場へと向かう。
シンプルだ。なぜか半笑いになる。
「さぁて、どんな湯よ」と
勇み入って来た者をあざ笑うかのような
無防備さだ。
「大浴場」と大上段に構えてからの
このギャップには、
おおむね予想通りとわかっていても
「天晴れなり」と痛快さを感じるほどだ
ボディーソープ&シャンプーはワンセット有り。
そして謎のバケツ。
洗い座は3か所あるが、シャワーが付いているのは
真ん中の1か所のみ。
湯船に入ってみる。
無色透明。ほぼ無臭。
肌ごたえはおだやかな感じ。
と、落ち着くが否や
やたらと青く主張してくる露天風呂へと
引き寄せられる。
青いですなぁ。実に青い。
露店風呂としては革命的なほどに青い。
四の五の言わずに湯の中へと身体を沈める。
温度はぬるめ。
そのせいだろうか、さらにおだやかな湯に感じる。
実はさらにこの先でも温泉に寄る予定だった。
「さ、次なる目的地へ」と
せっつく気持ちを駆り立てられるほどの
おだやかさといえよう。
しかし、
なんだかこんなかわいらしい眺めが
「あわてたって良いことなどありませぬ」とでも
言っているかのようで、
「さすがはドライブイン、旅路のオアシスよ」と
内湯に入り直したのは言うまでもない。
一言で片付けよう。
「損得勘定を蹴散らす器の大きさこそが大浴場級」
この事である!
車に戻りエンジンをかける。
だいぶ暗くなってきた午後5時過ぎ。
ヘッドライトを点灯。
次なる目的地、湯野上温泉が呼んでいる。
<つづく>
「芦ノ牧ドライブ温泉大浴場」データ:
<泉質> 弱アルカリ性低張性高温泉
<源泉> 芦ノ牧温泉綜合泉
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