前口上
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.......................
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04「華の湯」地獄 2012年3月20日
いつか行くつもりではあったが、実は仕事場から塩原まで
どれ位の時間で行けるのか、よくわからなかった。
それにどうせなら塩原の絶景も楽しみたい。
好天の春分の日の午前中、目的地に向けて出発した。
塩原温泉街を通り抜け、さらに「まだ走るか」といった所に
公営温泉施設「華の湯」はある。
公営施設らしく、那須塩原市民は入浴料が100円割引になり600円。
脱衣所に貴重品用のちいさめロッカーはあるが、服はかごにINするタイプだ。
浴場は凝りまくりな雰囲気はさほど無く、タイル張りで実にシンプル。
ボディーソープ、リンスインシャンプー有り。
祝日だけに混んでるかなぁ、と覚悟して行ったのだが、
昼前であったせいかかなり空いていて、悠々と湯に浸れた。
無色透明な湯で、香りはかすかにする程度。
だが、しばらく浸かっていると肌がすべすべしてきて、
「温泉だー」と実感。
サウナもあるので当然入ってみる。さほど広くはない.畳三畳程度か。
先にどこかのおっちゃんが入っていたのだが、オレが腰を下ろした次の瞬間、
「あー、これで20分だなぁ」とちいさく声にして唸った。
まるで「お前は20分も入っていられるかな?」と挑発してるかのようだ。
へへ、オレはそんな挑発には乗らないぜ.オレにはオレのペースがあるのさ。
6,7分程度でスイっと腰を上げ、水風呂の水をざぶざぶと浴びて
また内風呂の湯に戻ってみた。
大きな窓の外にはコンパクトだがそそる露天風呂が見える。
「ああ、サウナの後に露天風呂に入ったら気持ち良さそうだなぁ」
そう思い立ち、再びサウナに入る事にした。
あのおっちゃんが水風呂の水を浴びている。
どうやらさすがのおっちゃんも「もういいだろう」という事なのだろうか。
その横を通り、サウナに入ると誰もいなかった、のだが、
おっちゃんも再びサウナに入場してきたではないか。
そしてまた別のおっちゃんが一人、また一人と、どういうタイミングなのか知らんが、
6人で満席のサウナに4人が腰を下ろした.座席は3人3人の二段。
オレが上段に一人で座り、下段におっちゃん三人が座るといったフォーメーションだ。
つまりオレは三人のおっちゃん連合に逃げ場をふさがれた格好になる。
「こ…これは、一体…!?」
何だこれは、と。思いつつも「まぁそのうち、いずれかのおっちゃんが
腰を上げるだろうから、それに続こう。しかし、最初に入っていたおっちゃんは
きっとまた粘るだろうから期待薄だ」
、などと考えてるうちに先に「良き頃合い」とした6,7分は瞬く間に過ぎた。
「もう、出たいのだが…」
そう思い始めた次の瞬間、サウナ内に流れていたBGMが
このタイミングでどういうワケか猛烈に戦闘モードな曲が流れてきたのである。
例えるなら映画の戦の場面で、真田幸村あたりが「者ども、かかれーぃ!!」と
突撃の激を飛ばし、赤装束の猛者どもが「うおおおおおおお!!」っと
死をも恐れずに家康の陣を目指し突っ込んで行く、そんな場面で使われるような
勇ましい事この上ないようなBGMだ。
「ダメ!サウナ内にこんなBGM流しちゃダメだー!」と心の中で叫んでいた。
いわんや、4人のサウナ馬鹿は誰一人腰を上げようとはしない。
オレにはおっちゃん達の後頭部しか見えなかったが、
おっちゃん達の血走った目には、きっと家康の首しか見えていなかったに違いない。
サウナに入ってから10分以上は経過していた。
「…大丈夫。オレはまだまだ戦える。オレは大丈夫だ。」などと、
自分を鼓舞しているとBGMの曲が変わった.今度のは聞き覚えがある曲だ。
「天空の城ラピュタ」のエンディングで流れる「君をのせて」だ。
「あの、ち〜へい〜せ〜ん〜♪」という歌詞で始まるあれ。
そのピアノバージョン。
一気に戦闘オーラがかき消されていく。その気配がはっきり見えた。
事実、「戦いは終わったのだ」と言わんばかりに、オレの前に座っていた
おっちゃんがまず腰を上げた。
「今しかない」オレも続けざまにサウナを後にする。水をざぶざぶ。
それにしても「なんという出来過ぎた、ばかばかしい出来事だ」と、
今思い返しても不思議でならない。
さて、岩をランダムに積み上げた感じの露天風呂に出てみる。
風がおとなしい。実に気持ちいい。思った通りやっぱり気持ち良かったのだ。
おすすめポイントは露天風呂に向かって左の端だ。
ここに身を沈め、温泉が流れる積み上がった岩を見上げると
その奥に古民家風の、味のある施設の屋根のひさしが見え、
それをなめつつさらに高く目をやると、春の青空がいっぱいに広がっていた。
「素晴らしいショットじゃないか!」
はうわぁー、と意味不明の唸り声をあげつつ、しばらくその光景を眺めていた。
「辛かった冬が過ぎ去ろうとしてるのだなぁ」
さっきの「君をのせて」が何故か頭の中で流れ始めて
まるで感動のラストを味わっているかような気分に満たされた。
一言で片付けよう。「逆転サヨナラ極楽ホームラン」である。
余談ではあるが、入浴後、併設されている軽食レストラン「母手寿」にて
看板メニューである「ぼてじゅう」を食す。
メニューには「和風ピザ」と記されていたが、食べてみた印象としては
「イタリアンもんじゃ」の方が適切であるような気がした。
お立ち寄りの際には是非おためしあれ。
◇「華の湯」サイト
◇「華の湯」周辺マップ
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