前口上
22「太陽の湯」
21「ゆの郷」
20「りんどうの湯」
19「りんどう湖ホテル」
18「皆幸乃湯」
17「雲海閣」
16「ピラミッド温泉」
15「那須大丸ガーデン」
14「大丸温泉旅館」
13「大鷹の湯」

12「湯荘 白樺」

11「ほたるの湯」
10「福のゆ」
09「芦野温泉」2
08「サンバレー那須」
07「あかつきの湯」
06「鹿の湯」
05「千本松温泉」
04「華の湯」
03「芦野温泉」
02「幸乃湯温泉」
01「源泉 那須山」
.......................

2013年の「温泉地獄」
2014年の「温泉地獄」
2015年の「温泉地獄」
2016年の「温泉地獄」
2017年の「温泉地獄」
2018年の「温泉地獄」
2019年の「温泉地獄」

参考サイト

MAPPLE観光ガイド
湯まっぷ
那須温泉郷のサイト
塩原温泉郷公式ページ
板室温泉旅館組合
温泉の泉質成分効能

12「湯荘 白樺」地獄 2012年9月17日

風が強い。台風16号の影響だ。
速足で流れていく雲の隙間から時折差す日差しは、
相変わらずの残暑を感じさせる9月、連休2日目。
前日の温泉に何だか納得がいかなかった。
「せっかくの連休を腑に落ちぬまま終わらせてよいものか?」
連投策である。それ以外の選択肢は無かった。
塩原の温泉街を抜けて、もみじラインへと入る。
標高951mまでのぐねぐねとしたテクニカルなコースを登り続ける。
非力な愛車ジーノにはなかなかにしんどい。
「ミホノブルボン…」
競馬を知らない人が聞いたら何のことやらさっぱりわからない独り言を
つぶやいたその時、硫黄臭が鼻をくすぐりだした。
「おお、近づいている!」テンションがぐぃーっと上がる。
硫黄臭にテンションが上がってしまうなんて、もはやどこかおかしい。
到着したのは奥塩原新湯温泉地にある「湯荘 白樺」だ。

こちら、湯治宿であるのだが立ち寄りで温泉に浸かる事ができる。
雑然とした感のあるフロントで料金500円を払い、3階にある風呂場へと向かう。
脱衣所はこじんまりとしている。ロッカーなどは無く、服はかごにインするタイプだ。
7つホドあるかごが全て裏返してある。つまり誰も入っていない。
貸切状態。
サイトにあった写真通り、壁と湯船は全て木製張り。源泉が流れ出ているあたりが
おもむきのあるいい感じに黒ずんでいる。
その源泉がちょろちょろと流れ出ている音だけが響いている。
開けはなたれた窓から、さすがの標高と思わせる涼しい風が入ってくる。
そして、白濁した湯。ばりばりの本物感。
誰もいない事をいいことに、出入り口で立ち尽くしたままそれらの存在感を
全身で受け止めていた。
洗い座はふたつ。ボディーソープ&シャンプー有り。
そそくさと身体を洗い、湯船へ向かう。
熱い。しかし、入れないホドの熱さではない。「おう」っと思わず声が出る。
ともあれ、腰が辛いので半身浴にしてみた。
砂時計が置いてある。3分計だろうか。3分浸かっては、3分休憩、を繰り返してみる。
やや高い位置に窓があり、湯船に浸かりながら外を眺めると雲が走っていくのが見える。
変わらず源泉のちょろちょろと流れ出る音だけが耳に入ってくる。
ふと、なにやらよくわからない感覚がよぎる。
決してガスで脳がやられたワケではないのだが、
(いや、硫黄臭にうっとりするあたり少々やられぎみか?)なんといったらいいのやら、
現実感が薄いというか、映画のワンシーンに放り込まれたような、
いや、逆かもしれない。やけに生々しい現実感のある夢を見ているような。
今、自分が、そこにいるという実感、が、むしろ不思議に思えるかのような。
あの時、もしかしたらオレの身体は半透明になっていたのかもしれない。

「ああ、何だろうなぁ、この感覚は」なんて考えていると
それを打ち破るように、服を着たままのおっちゃんが風呂場に入ってきた。
『この水は清水です』と書かれた蛇口を調べている。
その蛇口につながれたホースの先から水が出続けていて、
それを見ながら「ああ、大丈夫だな。いいみたいだな」なんて独り言を言っている。
そのおっちゃんが立ち去り際、こちらに目を向けて微笑んだ。
「水、出が悪くなっちゃったんですか?」なんて声をかけてみる。
「うん、この前の雨でね、出なくなっちゃってさ」と答えてくれた。
(ああ、あれって山の湧水なんだ。ふーん、雨で…へぇ〜…)
オレは現実に戻っていた。

湯船に出たり入ったりを5セット程繰り返して、最後にクールダウンの為に
シャワーで水を浴びた。
「白樺」を出ると、道路を挟んだ正面に「むじなの湯」とかかれた看板が見える。
こちらも知る人ぞ知る名湯だ。(源泉は白樺と同じと思われるが)
一瞬、「行くか」とも思ったが、やめた。
気持ちのどこかに沸き起こった「せっかくここまで来たのだから」という思いを
ぎゅっと押し殺したのだ。「また来ればいいじゃないか」と。
自宅から一時間もかからず来れるのに、あまりにも自分にとっての
日常感のないこの地を、そのままの感覚にしておきたくなかった。
いつでも来れるマイフィールドにしたい、という願望がにょーっと先の思いを
押しのけたのである。つまり奥塩原との距離をもっともっと縮めたいのだ。
非日常的だからこそ胸がざわめくのかもしれないが、日常化した中から
新たに感じる硫黄臭もあるのではないだろうか?さもありなん。
一言で片付けよう。
「初対面は異空間!」 このことである。
ちょっと恋愛に似ているかもしれない。(違うか?)

余談ではあるが、ここへ向かう前に「釜彦」という店で塩原名物(?)の
スープ入りやきそばを食べてみた。麺はやや細めの縮れ麺。
スープ入りやきそば、と聞いてみなさんはどんな味をご想像するだろうか?
…今、思い浮かんだ味を若干ウスターから中濃ソース寄りに修正してもらいたい。
…そう!正にその味である!美味しかったですけどね。

「湯荘 白樺」データ:Ph2.6
 単純酸性硫黄温泉(硫化水素型)


◇「湯荘 白樺」サイト

◇「湯荘 白樺」周辺マップ